波人推薦図書 その一

”Search for the perfect wave”Vol.1  by Kevin Naughton, Craig Peterson

この本は『サーフトリップの記録』です。つまり波と旅、そんなのサーファーの日常じゃんと思うかもしれない。でもね、70年代にカリフォルニアのサーファーたちが、メキシコのバハ半島やメインランドそして中南米へと向かった旅行記となると話は変わってくるよね。しかもサーファー二人が、シニアフォトグになるほどの腕前と、UCLAで英文学の学士号を取るほどの文才となると、その記録のクオリティーは別次元となる。

Craig Peterson & Kevin Naughton by Art Brewer

そのケビン・ニュートンとクレイグ・ピーターソンは、後に米サーファー誌のお抱えスタッフとなり世界中に足を伸ばすことになるのだけど、このVol1は、その足がかりとなった旅。彼らは初期のタバルワをサーフしているし、その他にもセネガル、リベリア、モロッコ、フランス、スペイン、アイルランド、バルバドスなど、少なくとも数週間長くなると数ヶ月を費やしてサーフトリップを敢行しバージンウェイブを数多く発見することになる。クレイグがその道中で撮った写真はサーファー誌のカバーも飾っている。

写真は全てフィルム、おそらくコダクローム64という増感さえできない代物。カメラはマニュアルフォーカス、シングルショット、ハウジングはニコノス。だからピントが合うなんて奇跡に近い。でも作品はどれを見ても味がある、デジタルには出せない何かがある。サーフボードでいえばハンドシェイプか…とにかく同じ場所に行っても再現することは不可能だ。

この本で特に貴重なのは、メキシコのペタカルコの波が掲載されていることだ。かつて、メキシコを指向するサーファーのトップシークレットだったが、それを知らなかったケビンとクレイグが、この波を撮影し、サーファー誌に掲載されて大問題に発展したという実話がある。脅迫電話や暴力沙汰になったとかならなかったとか。とにかくこの波は完璧なAフレームでサーファーを魅了したようだ。現在は港の建設により消滅。サーフブレイクとしてはまだ残っているようだが…当時のようなクオリティは消滅した。

VWのバンです。メキシコの旅にはこれ以上の車は無いでしょう。故障しても修理が簡単だし、どんな僻地でも部品が手に入りやすいらしい

クレイグ氏からお借りした私のお気にりの一枚。
左からグリノータイプの自作ニーボードを持つグレッグカーペンタとケビン・ニュートン。場所はコスタリカ

割引セール開催中!

さて、このVol1が創刊されて数年が経過ということで、割引セールが始まったのでお知らせします。購入しようかどうしようか迷っていた人もいると思うけど、今がチャンスですよ。ちなみにVW愛好家にはシビレる限定ポスター&Tシャツも販売中です

https://www.search-for-the-perfect-wave.com
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G-ランドレポート2023春

ジェリー・ロペスが愛したGランド(グラジガン)。その伝説のレフトハンダーは、ジャワ島の大自然の中にある。Gランド周辺は虎などの野生動物が生息する国立公園で立ち入りが規制されていたが、先達のサーファーによって開拓され、現在ではサーフキャンプが運営されている。アクセスも年々アップデートされ、今ではバリ島から専用スピードボードに乗船して、たった3時間弱となった。

さて、Gランドの波は大きな岬に沿ってブレイクするレフトハンダーだ。(上図参照)いくつかのセクションに分かれていて、大きく分けるとコングス、マネーツリーそしてスピーディーズとなる。それらの間にもファンパーム、リッジ、ランチングパッドというピークが存在するが、慣れてこないとわからない。おおよそでボビーズというキャンプの前がマネーツリー、ジョーヨーズの前がスピーディーズと思えばいいだろう。スピーディーズが一番浅くバレルも大きい。

Gランドにはサーフキャンプが4つある。そのうち施設がしっかりしているのがボビーズとジョーヨーズだ。今回は初めてジョーヨーズを選んだ。今回はわたしにとって3回目のGランドで、これまではボビーズに宿泊している。宿を変えた理由は飯が美味いという噂を耳にしたからだ。ここのキャンプは通年で運営されてない、開かれているのは日本の春から秋にかけてのシーズンだけ。宿泊の予約はネットで直接できるが、日本のサーフ系旅行会社に頼むという方法もある。

Gランドの全景はこんな感じ。コングスは左の岬のさらに奥、左手にブレイクしているのはリッジからのマネーツリー、写真が重なっているところがランチングパッドからスピーディーズに続いているんだと思う…Gランドは広大なサーフブレイクで、経験不足の私にはどこがどこなのか今だによく分からない。

繰り返すがGランドは広大で、セクションが多数ある。総じて言えることはブレイクが早いということだ。リーフブレイクというよりは、むしろパワフルなビーチブレイクでサーフィンをしているような感じでもあり、サーファーの波のジャッジングとテイクオフそしてバレルの技術が、露骨に表れる波と言えるだろう。だから面白いんだよ、いやつまらないと人によって意見は分かれると思う。サーフィン道場と呼ばれる所以である。

ジェリーロペス自身も自叙伝でこのブレイクを理解するのに苦労したと書いている。ここへ初めてやってきて満足したと感じる人は少ないんじゃないかと思う。日本に帰ってきてから「あの波はこう攻略すれば…」とつい考えてしまう。それでまた再訪したくなるんじゃあないかな。10年以上通い続けている人も多いと聞く。

この写真はおそらくリッジ、手前がマネーツリーのインサイドかもしれない。ブレイクを理解するとなると、自分なりの公式を組み立てる必要があるだろう。つまりメンタワイのようなスーパーファンという波質ではない。

今回はオーバーヘッドから8フィートくらいまで波が上がった。Wオーストラリアから来ていたオージーもグッドサイズと喜んでいた。沖のボンビーズがブレイクした時もあった。(Aフレームだったからたぶん)

これがある日のGランドでの記録。セッションは1時間40分ほど、ちゃんと乗った波は7本。赤いラインが最長で193m。その他は短いが60~70mは乗っているし、なんちゃってバレルもメイクしているはず。2時間に満たないが、かなり集中するので今日はもう十分かな…という気持ちになる。バリより水温は低く体が冷えるから、スプリングスーツは必携だ。ローカルサーファーはいないが、ゲストが多いとそれなりに混む。みんなマナーは良い、遠慮はもちろんいらない。

Gランドの自然を象徴するのがジャングルに点在するこの竹。有刺鉄線のように棘があり、幹が絡まりあって不気味なオーラを放っている。見かける動物は猿、孔雀、猪そして鹿などで残念ながら虎は現れなかった。海にはジュゴンがいるらしい。

お宿はちゃんとしたベッドもあるし電気も通っている。エアコンも付いているが夜は冷えるので注意が必要。シャワーは水のみ、温水シャワーがある部屋はちとお高い。このモスキートネットは持参したもので必要はない。蚊に刺されることはほとんどなかった、キャンプの周囲は駆除されているのかもしれない。

ボビーズより飯が良いという噂だったが…どんぐりの背比べかな?

ときどきバフェスタイルが登場する。ロウニンアジの丸焼きが出たこともあった。美味しそうに見えるが微妙…ちなみにジョーヨーズはディナーにスープとデザートが必ず付いてきた。これは丸。

今回は自分でシェープしたボードのテストという名目でGランド入り。6’3″と7’2″どちらも問題なかった。Gランドの波に対応できたことはうれしいが、波が良いとどんなボードでも走るという事なのかもしれない、苦笑。とにかく、ここでは浮力のしっかりあるテイクオフの楽なサーフボードがお勧めだ。アベレージサーファーはペラペラのボードだと苦労するだろう。Gランドには、20/20やタイガートラックという中級者向けのマイルドな波のポイントもある。

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今回は9日泊の滞在となった。その前後にバリのホテルに一泊した。飛行機はマレーシア航空で、20kgまでならサーフボードケースでも超過料金はなかった。ざっくりと計算しても総額で20万円は超えていないはず。(アーリーシーズンの早割で宿泊代の支払いは6日間計算)。インドネシアの入国に際して陰性証明の提示は求められなかった。

photo by RiRyo surfer:unknown

この写真はGランドのタワーから撮影。一人でやってきて静かにサーフィンを楽しんでいる。そんな感じのサーファーが多かった。ロータイドになると、この浅瀬は300mほど先の棚まですべて干上がる。リーフブーツはマストアイテム。リッジとマネーツリーの間にキーホールがあってロータイドでもパドルアウトしやすい。